人生の新しい扉を開くとき、そこには必ず「思い描いていた理想」と「泥臭い現実」の強烈なギャップが待っています。

40代半ばで決断した、加計呂麻島への移住。それは、ただ美しい海とスローライフを満喫するような、お気楽なリゾート生活ではありませんでした。自らの意思で環境を変えるということは、新しい社会や自然の中で、すべてのリスクを背負って自力で進む覚悟が問われるシビアな道のりです。

今回は、移住して「これは本当にしんどい!」と頭を抱えつつも、笑い飛ばすしかない現実トップ3をご紹介します。新しい挑戦にはつまずきがつきもの。でも、その不格好なもどかしさすらも、私たちの人生を豊かにする大切な「土台」になっていくのです。

【目次(Table of Contents)】

  • [1] 離島の洗礼!都会の常識が通用しない「しんどい現実」Best 3
    • 第3位:【自然の脅威】インフラ停止と30カ所の虫刺され。サバイバルは甘くない
    • 第2位:【アクセスの悪さ】往復4時間の幼稚園送迎!?タイパ至上主義からの強制脱却
    • 第1位:【ポンコツな記憶力】顔と名前が一致しない!優しい島民に救われる日々
  • [2] リスクを背負う覚悟と、自分を許す「ネガティヴ・ケイパビリティ」
    • ① 楽観論の罠。「何とかなる」の前に必要なプロの視点
    • ② できない自分も「土台」にする。波に身を任せて休む勇気

■ [1] 離島の洗礼!都会の常識が通用しない「しんどい現実」Best 3

 第3位:【自然の脅威】インフラ停止と30カ所の虫刺され。サバイバルは甘くない

移住して痛感したのは、自然の圧倒的な力の前では人間は無力だということです。先日も台風の直撃を受け、あっけなくインフラがストップ。当たり前のように電気や水が使える生活が、いかに脆い基盤の上に成り立っていたかを思い知らされました。

そして、日常的に直面するのが「虫」と「危険生物」です。昨日も子どもの体操教室に付き添ったわずか2時間で、手足を30箇所も蚊に刺され、痒みで寝苦しい夜を過ごしました。虫対策のコストや肌への刺激もバカになりません。さらに、美しい海にはウミヘビ、オニダルマオコゼ、ミノカサゴといった危険な生物が潜んでいます。山や草むらにはハブの危険。これらをクリアして自然を満喫するには、まだまだサバイバルの修行が必要です(苦笑)。自然の脅威は「誰かが何とかしてくれる」という甘えを一切許してくれません。

 第2位:【アクセスの悪さ】1日約6時間の幼稚園送迎!?タイパ至上主義からの強制脱却

加計呂麻島は、想像以上に巨大な島です。アクセスの悪さには覚悟していましたが、最も1日を圧迫しているのが「幼稚園の送迎」です。

朝は7時過ぎに家を出発し、フェリーを乗り継いでなんとか幼稚園へ。そのまま帰りのフェリー(10時20分発)に乗り、帰宅するのは11時過ぎです。そして息つく間もなく、夕方16時には家を出発し海上タクシーに飛び乗りお迎えへ。17時30分発のフェリーで戻り、自宅に着くのは18時過ぎです。

その合間を縫って、小学生の長男の下校後のお世話、夕食やお風呂の準備……。

送迎とフェリーの待ち時間だけで1日の半分が終わるという、都会のタイムパフォーマンス(タイパ)感覚からすれば「最悪」とも言えるハードスケジュールです(笑)。

ただ、これほど非効率な毎日ですが、見方を変えれば、大自然の澄み切った空気の中を毎日ドライブしたり、子ども達とのかけがえのない今の時間を楽しむことができる贅沢な環境でもあります。まだまだ都会のスピード感が抜けず、気持ちの切り替え訓練の真っ最中ですが、この「圧倒的に思い通りに進まない時間」の中にこそ、人生の豊かな余白が隠れているような気もしています。

※もちろん島には保育所があるので、そちらに通えばこんな時間がかかることはありません。文科省(学校教育法)管轄の幼稚園に通わせたいというのは親のエゴでもありますので、離島に住むのは大変と思わないでください。
もしくは幼稚園がある町(古仁屋)で仕事をすれば出勤時に送り、帰宅時にお迎えに行けるので問題ありません。
私の場合は小学生の長男の下校後のお世話や習い事などへの送迎も必要なためなかなか難しいですが、周囲の方の協力を得れば実現可能です

  第1位:【ポンコツな記憶力】顔と名前が一致しない!優しい島民に救われる日々 そして堂々の第1位。それは、島暮らしで最も大切な「人間関係」における私自身の大きな壁です。 世界的著名人にインタビューをしてきたあるジャーナリストによると、トップに立つ成功者が共通して持っている力の一つは「相手の名前を必ず憶えて呼びかける」ことだそうです。しかし、今の私はその真逆を見事に行くポンコツぶりを発揮しています。

以前ご挨拶してお名前を教えていただいたのに、数週間後にお会いすると「えっ、誰だっけ…?」と記憶がすっぽり抜け落ちてしまうのです。「少しずつ覚えればいいよ」と温かいアドバイスをいただくものの、その度に失礼な態度をとってしまい、「なんて相手に申し訳ないことをしたんだ」と勝手に自分を責め、一人で苦しんでいます。

それでも、島の皆さんは私の失礼さを笑い飛ばしてくれるほど優しく、温かい人ばかり。自分の不甲斐なさに落ち込みながらも、人の優しさに救われる毎日です。

■ [2] リスクを背負う覚悟と、自分を許す「ネガティヴ・ケイパビリティ」

① 楽観論の罠。「何とかなる」の前に必要なプロの視点 新しい環境に飛び込むとき、社会や自然は決して優しくありません。プロフェッショナルとは「いかなる状況におかれても的確な判断が出来、リスクを知りながら行動を起こせる人」だと言われます。 「なんとかなるさ」「誰かが助けてくれる」という過度な楽観論だけで乗り切れるほど、新しい挑戦は甘くありません。最終的には自分でリスクを背負い、不便さや自分の限界と向き合いながら、自力で進むシビアな覚悟が必要です。

② できない自分も「土台」にする。波に身を任せて休む勇気

しかし、そんなシビアな現実があるからこそ、「どうしても無理な時」や「自分を責めて苦しい時」は、あえて力を抜き、波に身を任せることも必要なのだと私は思います。

私はこれまで看護師として、精神科や訪問看護の現場で、患者様や利用者様の生活に深く寄り添うケアの実践と、精神的なサポートの重要性を学んできました。その経験から言えるのは、名前を覚えられなくて落ち込む自分も、虫刺されで嘆く自分も、まずは丸ごと肯定して受け入れてあげることの大切さです。答えの出ない事態に耐える力を「ネガティヴ・ケイパビリティ」と呼びますが、時には立ち止まり、後ずさりしたっていいのです。

その失敗や不格好な姿すらも、これからの人生を支える強固な「土台」になっていきます。

厳しい現実に立ち向かう覚悟と、自分を許して休む勇気。

今、新しい一歩を踏み出そうとしている方は、たまには「ポンコツな自分」を愛しながら、ご自身のペースで楽しい方へと歩き出してみませんか?

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